コラム Vol.3.2 「壁紙と天才の関係 -The relationship between wallpaper and genius- part.2」

– 壁紙と天才の関係 –

第2回 「マイヤ・イソラとジム・トンプソン」

全2回に分かれてお送りしてきたコラム「壁紙と天才の関係」、最終章の今回は、世界中で大人気の北欧のファッションブランド「marimekko(マリメッコ)」の代表デザイン、ウニッコの生みの親、マイヤ・イソラと、絶滅寸前だったタイシルクの復興に尽力した元スパイという異色の経歴を持つジム・トンプソンのふたりの生涯を追ってみましょう。また、じっくりゆっくりお読みください。

「伝説のテキスタイルデザイナー マイヤ・イソラ」

Maija Sofia Isola(マイヤ・ソフィア・イソラ 1927/3/15~2001/3/3)はフィンランド出身のテキスタイルデザイナーで、北欧のファッションブランド、マリメッコの代表的デザインであるウニッコの生みの親です。その昔、旅先で出会った古い壺や器をモチーフにした作品がマリメッコの創業者となるアルミ・ラティアの目に留まり、マリメッコのデザイナーとしてその才能を開花させます。実はマリメッコでは花をモチーフにしたデザインは禁止されていました。しかし、マイヤは自身の意志を貫き、幼いころから大好きだった花を沢山描きました。そして1964年にUnikko(ウニッコ)が誕生します。今やウニッコはマリメッコのロゴといっても過言ではないくらいのデザインとなり、時代、世代を超えて世界中の人々に愛され続けています。マリメッコには衣服や絵だけでなく、壁紙も存在します。そんなマリメッコのカラフルな壁紙を紹介すると共に、自然を愛し、自由な旅から多くのインスピレーションを受けた天才の言葉をご紹介しましょう。

「何を見ても、プリントデザインに見えてしまうの。映画を見ても。雪や氷を見ても。お皿を洗っている時でさえ。でも、いちばん明らかなのは、恋をしているとき。」

壁紙
マリメッコの見本帳とサンプルたち
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Unikko(ウニッコ)

ウニッコ以外には存在しないかのような奇抜でカラフルなデザインです。絵の具で描いた花びらがゆらゆら揺れているようです。これだけポップなデザインなのに生き物としてのリアルさを感じられるなんて凄いですよね。なんででしょうか。旅と自然に恋したからでしょうか。

 

「ブランド名にもなった元スパイ ジム・トンプソン」

James Harrison Wilson Thompson(ジェームズ・ハリソン・ウィルソン・トンプソン 1906/3/21~1967?)はアメリカのデラウェア州生まれの元建築家、元軍人です。ニューヨークで建築家として活躍した後、第二次世界大戦にアメリカが参戦する前に自ら志願してアメリカ陸軍に入隊します。1942年に上官の誘いを受け、CIAの前身機関であるOSSに転属します。1944年6月のノルマンディ上陸作戦に従軍し、翌年には日本軍に対する秘密作戦に参加しますが、日本軍の降伏によって作戦決行前に終了します。この頃、連合軍に鞍替えしていたタイに留まることになります。終戦によって帰国命令が届きますが、私生活の問題もあり、タイに残ることを決意します。バンコクのホテルの経営に携わった後に、大量生産の普及によって衰退していたタイシルクに着目します。タイシルクの復興と、売込みに没頭した結果、ハリウッド映画の衣装に採用されるなど、欧米各国で爆発的な人気となります。世界中で有名になった彼ですが、1967年3月26日に休暇で訪れていたマレーシアの高級別荘地にて忽然と姿を消します。その後、現在までその姿は発見されていません。この事件は松本清張の推理小説のモデルにもなっているようです。彼が人生の半分を費やしたタイシルクは、現在でもタイの主要な産業のひとつとなっており、特に自らの名を冠したジム・トンプソン ブランドは、最高級ブランドとして世界中で高い人気を誇ります。ブランドには、衣服や家具、雑貨など沢山の商品がありますが、その中に壁紙も存在します。いくつかカタログを見てみましょう。

壁紙
CORON W01015-01
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SAMARA W01012-19
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CARAGA W01011-01

高級シルクの繊維質を見事に再現しています。ファッションや雑貨を中心としているブランドなので、デザイン性が非常に高く、無地でもシルクの光沢によって華やかになっています。魅惑の繊維の向こうには謎の失踪を遂げたトンプソンの秘密が眠っているのかもしれません。

こうして天才たちの生涯を追っていると、普通ではないエピソードがいくつも出てきます。映画や小説のモデルになっている人物ばかりですが、この200年の間に我々と同じ地球上に実在した人物です。こうした人たちの手仕事の上に私たちが自由に壁を彩ることができる。ほんの少し、心の片隅にそう感じてもいいかもしれません。

 

全2回、長らくお付き合い頂き、本当にありがとうございます。

いかがでしたか。

お楽しみ頂けましたでしょうか。

壁彩の歴史のエピソードはこれから一緒に創っていきましょう。

きっと先人たちが見守ってくれているでしょう。

それでは、

May the Force be with you.

 

Wallpaper Speciality Store COZY

 

前回までのコラムはこちら
コラム Vol.3-1「壁紙と天才の関係 part.1」
コラム Vol.2「壁紙の歴史 -The history of Wallpapers-」
コラム Vol.1「壁彩 -hekisai-」